筆不精のため、またずいぶん間が空いてしまったが視察報告の続きです。
 
生産年齢人口増加対策について~徳島県神山町

 IT企業のサテライトオフィスの集積で新聞やテレビでも取り上げられた徳島県神山町。どこを見渡しても正真正銘、間違いないほどの田舎にIT企業や企業家たちが集まるのは何故か?またどの様にプロモーションしてきたのか?NPO法人グリーンバレーのサテライトオフィス担当者(当日はWEEK神山と言う宿泊施設の開所式のため、代わりの方でした。)から企業施設の案内をしていただき、話を聞く。

 最初は古民家を改築し、オフィスとして使っている(株)プラットイーズさん。本社は東京都渋谷区にあり、事業内容はメタデータ(番組詳細情報)に関する各種のオペレーションを行っている。ここには20名程度の社員が在籍し、内5名が地元からの就職で残りの15名は外からの人とのこと。神山町への移住者もいるが、ほとんどは徳島市から通勤しているそうだ。

ここで働く方へは特に移住促進のための活動はせず、住みたい人には地元の不動産業者を紹介する程度。基本的スタンスは「神山町に来たい企業・企業家は来たければどうぞ。」と言う感じ。することは地元住民や商店・工務店などとの接点を作ったりするだけ。徳島県としては助成をし、誘致PRなどもしているようだが、神山町及びグリーンバレーとしては特に積極的な企業誘致はしていないとの事・・・。

 しかし、この言葉には裏がある。それは「逆指名権」と言う考え方。グリーンバレーの理事長でもある大南信也氏によると、将来的に必要となる若い働き手に対しグリーンバレーでは「逆指名権」を持ち、これを「ワーク・イン・レジデンス」と呼んでいる。

 企業や人に来てもらうのではなく、来てほしい人を呼ぶ。例えば神山町の△△な所で○○を起業しませんか?あるいは□□を開業しませんか?と特定の職種を逆指名するそうだ。単に田舎暮らしに憧れて移住してくる若者は長続きしない、定住してもらうためには・・・との思案の結果生まれたのがこの「逆指名権」と言う考えだそうだ。

 その結果としてIT企業のサテライトオフィスやカフェやパン屋さんなどを誘致し、そこから70名ほどが神山町に移住しているが、決してこの活動だけでうまく事が運んだ訳ではない。そもそもIT企業が神山町に注目した背景にはネットインフラ網の充実がある。徳島県自体が高速通信回線の設置状況が全国No1である上に、神山町では東京などと違って回線が混雑することもない。

 そしてもう一つの理由は、次に案内された閉鎖した縫製工場を改修したサテライトオフィス「コンプレックス」にあった。ここは、共同のワーキングスペースとなっており企業・個人事業者あわせ7社ほどが入っている。ここでの魅力はやはり賃料の安さ。 
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KAMIYAMA VALLEY SATELLITE OFFICE COMPLEXさんのHPより引用)

表記のように1人で起業を考えるなら月1万円ポッキリ、企業としてでも10名までで月3万円という安さ。このランニングコストの安さも魅力の一つだろう。

そして最後に、何より大きなきっかけとなったのは1999年より取り組んでいる「アーティスト・イン・レジデンス」であろう。これはアーティストを町に招聘し、創作活動の場にしてもらう活動である。ただやり方としては、「来てもらうにあたっても、神山町はお金がないので大したことは出来ません。」とあらかじめ理解して頂いた上で、良かったら来てください歓迎いたします。と言うような感じだそうだ。

この取り組みにより、神山町を気に入ったアーティスト達が創作活動のため滞在し、そのアーティストを通じて人と人のつながりが出来る。これが広がっていった結果が「ワーク・イン・レジデンス」につながっていると言う。「人と人とのつながりが人を呼ぶ」、この動きが山の中の小さな町にサテライトオフィスが集まった一番の理由である。

高松市のHPに理事長の大南信也氏の講演の記事載っていた。その中から言葉を借りると「企業を誘致するのではなく、人材を誘致する」「人と人とのつながりが、新しい動きや価値を生み出す」こう言った考え方は、地方創生はひと=マンパワーが重要であると言った記事をよく目にするが、まさにこのことであろうと感じた。

横須賀市がまったく同じことをやっても簡単に成功するとは思えないが、横須賀の地域特性や魅力を活かした「人材の誘致」(もちろん人参をぶら下げての誘致ではない)は一考に値すると思う。

外から呼ぶだけでなく、もちろん市内の方々もふくめて「人材」を「人財」に変えていく活動は町の魅力をあげるという観点からも重要ではないだろうか。
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古民家を改修したサテライトオフィス (株)プラットイーズさん)